80000)アジアシリーズの最近のブログ記事

4回目となるアジアシリーズは、埼玉西武ライオンズの優勝で幕を閉じました。大会の岐路に立ったともいえる今回のアジアシリーズで、改めて思ったことがあります。それは「アジアシリーズの妙味である、韓国と台湾の対戦をもっと盛り上げなければ!」ということです。

これまで何度も記したように思いますが、土曜の夜に日本以外のプロ野球チームが、決勝進出をかけて戦う真剣勝負。グラウンドには日本にはないような色彩のユニフォームをまとった選手たち。スタンドの両サイドからは個性豊かな応援合戦が繰り広げられ、チアリーダーが華を添えます。しかも、たった1,000円(自由席)で楽しめる。こんな娯楽は他にないでしょう。

そんなことから過去3回の大会は、当方なりに韓国-台湾戦の魅力をアピールし続けました。その効果があったかどうか分かりませんが、観客数は05年6,340人、06年6,445人、07年7,290人とわずかではありますが増えていました。日本の出場チームに左右されないこの対戦、やりようによってはウマミもありそうです。

しかし今回は諸事情によりスタートが遅れ、これといったプロモーションはしませんでした。また、当方自身、前回記したような慢心もあり、韓国-台湾戦の重要さを忘れていたようです。さまざまな要因が重なり、今年の観客数は5,228人。試合当日に雨が降った06、07年よりも、球場へ足を運ぶ人は大幅に減ってしまいました。

アジアシリーズという大会は、遠巻きに見ている人にとっては「大変だし別にいらないんじゃん」という存在のようですが、少しでもその大会理念に触れると「絶やしてはならない」と思える意義あるものです。

ただ、方法については一考の余地があるでしょう。今後、前向きにアジアシリーズが進んでいくことを願ってやみません。そのためなら当方はひと肌もふた肌も脱ぎます。

今年も、つたない内容にお付き合いいただき、ありがとうございました。J SPORTSのみなさんお世話になりました。木村公一さん、次回またWBCのグラウンドでいろいろ教えてくださいね。

それでは、またどこかで。アンニョン(さようなら)!

決勝戦後
決勝戦を戦った両チーム。それぞれを讃える姿は、とてもさわやかでした。

(文・写真/室井昌也)

室井昌也
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。韓国のスポーツ紙でも、2006年よりコラムを毎週韓国語で連載している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。

決勝、終わりました。統一、負けました。結果はご存じの通り0対1。野球好きP氏は熱戦だったと書かれていました。ただ、どうなんでしょうねぇ……。

小生、実況のお手伝いで、喋りの素人ながら慣れぬ放送席などにいたもので、試合の本質に至るにはちょっと時間が必要な感じがしています。それでも試合後、ドーム球場近くの居酒屋で、統一の一色優トレ・コーチと西武の中国語通訳・邱ちゃんの3人で食事をしました。そこで奇しくも「統一から見て、今日の試合はどうだったのか」という話題となったのです。格上である西武相手の0対1なら善戦健闘、あるいは惜敗だったのか。いや、イニングの細部を見直せば、勝てたかも知れない余地もあった(実際、決勝点は統一守備陣の中継ミスなのですから)。とすれば、悔いの残る試合と捉えるべきなのか。

将棋で、勝敗がついた後に「感想戦」なるものを両棋士が行うのをご存じでしょうか。最初から駒を並べ直し、一手ずつ進めて、互いの手について意見を交換する反省会です。プロ同士でなぜそんなことをするかと言えば、将棋には正解がないからです。自分では善手と思った手が、相手にはそう思われていなかったり、その逆もあったりする。まあそんなことのため、お互いに確かめる意味でするのですが、野球も同じです。とくに国の違うチームの短期決戦。一投一打の背景には、かなり差違があるからです。極端に言えば、それぞれの国・地域の野球に対する価値観の差違です。まあ、そんな理屈はあまり意味がないことかも知れません。

理屈をこねれば、いくらでも見方は生まれます。たかが1点差、されど1点差。この差が統一(台湾)と西武(日本)の差なのだ、とも言えるでしょうし、あくまでもこの1試合だけの結果とも言えます。外人投手が抜群のピッチングをすれば、完勝もする。でもそれがイコールそのチームの強さとは言えない。まあ、キリはありません。要するに今年のアジアシリーズは、統一がSKに勝ち、その統一を西武が下したシリーズだった。それ以上でも、それ以下でもない。決して日本が“まだ優れている”わけでもなく、台湾が韓国より強くなったわけでもない。これは北京五輪にもあてはまるし、おそらく来年のWBCにもあてはまることなのです。

そう考えれば、野球好きP氏の感想のように「熱戦だった」と受け止めるだけで、きっといいのでしょう。

とまれ、統一は“結果的”に西武を8回まで0点に封じ、9回に中継のミスでサヨナラ負けを喫した。その事実を、統一のメンバーには噛みしめて帰って貰いたいと思います。昨年はSKにコールド負けを食らった悔しさを胸に秘め、今季を戦った。ならば来季は、あの中継ミスをショート一人ではなく、メンバー全員が噛みしめ、戦って欲しいと思います。それで少しでも、統一の野球が進歩、成長してくれるなら……。

戦いは終わりました。日が暮れる頃……といってもドームだから日没はわかりません。でも、東京ドームはメンテナンスに入っていました。次の戦いの準備のために。

その戦いとは、そう、来年3月のWBCアジアラウンドです。

勝っても負けても、その光景は余韻を感じさせます。
勝っても負けても、その光景は余韻を感じさせます。

(文:木村公一/写真:CPBL提供)

木村公一
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。

まず、謝らなければならないと思っています。当方、そして韓国プロ野球に関わる人達は、完全に慢心していました。2年連続で日本出場チームに勝利し、昨年は統一にコールド勝ち。今年も「勝って当然」という雰囲気が蔓延していました。選手たちに手抜きがあったとは思いませんが、統一の選手達は本当にあっぱれでした。試合後の会見で、統一のリュ・ウエンション監督は「韓国シリーズ全戦にコーチを派遣してSKを偵察した」とのこと。監督以下、選手の姿勢は謙虚で、韓国側が忘れていた部分でした。

4回目となるアジアシリーズ。毎年土曜の夜に行われる韓国-台湾の両出場チームの対戦は、大会の中で、最も緊張感のあるものでした。しかし、昨年SKが躍進したことで、そのことをどこかに忘れてしまっていました。

思い起こせば韓国は、代表戦ではありますが、2003年のアテネ五輪出場をかけた札幌ドームでの予選で、準備不足により台湾に敗戦。そこで反省したはずでした。その結果、06年、WBCアジアラウンドでは入念な台湾対策を練り、勝利したのですが、今回、03年の時のように、油断がなかったとはいいえないでしょう。

「3点以上離して勝たなければならない」と、一発長打にかけたリュ・ウエンション監督と、負けた場合の失点率のことは頭になかったSK。韓国側の誰にもスキがありました。
SKは来年に向けて、今年と同じ目標を掲げることになります。来年もこの大会があることを、世界で一番願う集団となるでしょう。

決勝戦に進んだ、統一ライオンズ。今回は日本勢以外が王者に輝くチャンスかもしれません。心からエールを送ります。

記者席
試合後の記者席

試合後の記者席です。前列が台湾メディア。後列が韓国メディア。韓国は毎週日曜日が新聞休刊日なので、新聞記者たちは土曜日はお休み。記事は書きません。ということで閑散としてます。一方の台湾のみなさん、キーを打つ手に力が入ります。本当におめでとう!

(文・写真/室井昌也)

室井昌也
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。韓国のスポーツ紙でも、2006年よりコラムを毎週韓国語で連載している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。

また裏切られました。期待すれば裏切り、見放せば信じられない勝ち方をする。その統一が、SKに勝利で決勝進出です。下馬評ではSK有利の試合でした。統一とファンにはお詫びするしかないですが、でも西武に勝ったSKだけに、ムリもないとご容赦下さい。

ではなぜ、勝つのは難しいと予想された試合に勝利したのか。MVPは2本塁打、6打点のリュ・フウハオであることに異論はありません。でも同時に先発で7回3失点に留めたリン・ウェイピンも同等の殊勲者でした。今季、抑えも務めた彼にとって7回までは、シーズンで二回しかありません。それも急な先発だったのですから。昨日のブログで触れましたが、舞台裏では大きなハプニングがあり、先発予定のハックマンが飛び、彼が投げることになったのです(その顛末は、許しが出れば残りのこのブログでお伝えします)。そんな中での7回3失点。上々の出来、どころではありません。彼の精神力には、改めて賛辞を送りたいと思います。とくに2回に先制本塁打を打たれても動揺することなく、その後も毎回、走者を背負いましたが文字通り踏ん張りました。男、です。彼は心臓の大手術を経ての復活投手。人生最大の好投と賛辞してもいいでしょう。

リュ・フウハオ
MVPのリュ・フウハオです。

でも、ほんと。統一の連中というのはわかりません。勿論、これだけの好試合を演出したのは、彼らに十二分な能力があったからです。野球において、まぐれや運は付き物ですが、でも9イニングを戦う中では、それだけでは絶対に勝てません。

ちょっと冷静に、引いて観たとき……。この試合で他国のチームと戦う国際大会というものの、“別の顔”を見た気がしました。SKは統一のデータを洗い出していても、実際にシーズンで戦ってはいません。だから長所、欠点は発見していても、潜在能力まではわからないのです。統一も、SKのことは同様に詳しくわかっていないはず。そこにある“怖さ”を感じたのです。リュ・フウハオが、SKの抑え・チョン・デヒョンと日々戦っていたら、その実績を先入観に持っていたはずです。とすれば、8回にあのようなヘッドを返したスイングが出来たかどうか。言い換えればリュ・フウハオにとって目の前に出てきた投手は、ただSKというチームの抑えに過ぎない。そして投げるボールにキレはない。極論すれば、その程度の投手だったのです。“顔で投げる”という表現がありますが、その顔は、国際大会では通用しないというわけです。とどのつまりは、グランドで見えるもの、感じるものだけでの勝負。それが国際大会の神髄なのではないか。そんなことを感じました。

では最終日の決勝、対西武戦です。西武の先発は湧井。五輪にも出ているから、まったく知らないはずはありません。でも日々戦っている投手ではないから、湧井のボールに対する先入観も少ないはず。もし日本シリーズまでの疲労を抱えてマウンドに登れば、統一打線にとっては「ただフォークの良い投手」だけに映るわけです。そこが勝機でしょうか。あとは投手次第ですが、実際、SK戦で全力を使い切りました。成り行き任せです。序盤に大量失点すれば終わりです。でも、それぞれの投手が“ネンイチ”の投球をするかも知れません。

だから予想は不可能です。もう意味はありません。刮目して一回一回を観る。あとは野球の神様だけが知っていることです。

リン・ウェイピン
高津に似ていますが、“男”、リン・ウェイピンです。

(文:木村公一/写真:CPBL提供)

木村公一
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。

いよいよ明日、アジアシリーズ決勝戦を迎えます。
2勝1敗で、埼玉西武、SK、統一が並びましたが、失点率で
決勝は「埼玉西武ライオンズ×統一ライオンズ」のライオンズ決戦となりました。

明日の決勝を前に、SKワイバーンズと統一ライオンズの応援席をご紹介。
アジアシリーズでは学生野球のように、内野に応援席を設けてチームに声援をおくってます!国によって応援方法も様々なので、その場にいるだけでも楽しめます!

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まずはSK。


SKには、次長課長の河本さん似の応援団長がいて、
室井さんが作成した日本語のボードを持って、片言の日本語で場を盛り上げていました。
チアリーダーのダンスも、どこの国よりもセクスィーで必見です。


続いて統一ライオンズ!
今日のSK戦の応援席には、埼玉西武のユニフォームを着た方や、
阪神タイガーズの林選手のユニフォームを着た方や、統一のものを着た方などが集い
様々な人間模様が垣間見れました。

中でも人気をだったのが統一ライオンズのチアリーダー!

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檀上に上がり、踊り始めるとカメラを持った人がわんさか集まりだして・・・。
確かに、あの美貌でヘソ出しルックとくれば、人は集まる、もとい群がりますよね!
明日が彼女達を見られる今年最後のチャンスかもしれませんよ!

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頭に虹をつけている、統一のマスコット“OPEN小将”も大人気でした。
いわゆる今流行りのゆるキャラで、遷都くんなんて比じゃありません。
ドアラも油断してられないかも。かも。
早速、ニホンの女の子の心もつかんで、通路で大撮影大会が行われてました!
確かにこのユルさ、たまらないかも(笑)

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本家のライオンを模したマスコットも負けじと頑張ってましたよ!

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統一のチアとゆるマスコットは、明日も見られます!
是非、この国際的な雰囲気を肌で感じてみてください。

プロモ担

14日の中国・天津戦を15-0のコールドゲームで勝利したSK。ここからは決勝戦を見据えた戦いとなります。

キム・ソングン監督は、天津戦を前に「中国、台湾での試合では、勝ってもピッチャーはあまり使いたくない」とのこと。結果、天津戦では先発、ソン・ウンボム以降、イ・ヨンウク、チョン・ビョンドゥ、キム・ウォンヒョンの各投手が登板し、勝ちパターンの投手を温存することができました。台湾・統一戦でも、先発が予想される、チェ・ビョンヨン投手が序盤をきっちり抑えることが期待されています。チェ・ビョンヨンは昨年の本大会でも統一戦に先発。5回をソロホームランの1点に抑え、勝ち投手になっています。

一方の打線ですが、キム・ソングン監督は「統一は変化球投手が多いので、それに対応していきたい」とのこと。昨年は13-1で勝利しましたが、相手投手の四死球でチャンスを広げたという点もあります。チャンスで一気に攻め込めれば、SKは有利に試合を進められそうです。

また、前回記した、パク・キョンワン捕手ですが、天津戦には出場せず、統一戦には状況により、途中から出場の見込みです。そして、決勝戦に進出した場合は、スタメンマスクが予想されます。

さて、14日の試合前ですが、韓国から大きなニュースが飛び込んできました。それは、北京五輪代表で、ヒーローズのエース左腕、チャン・ウォンサム投手(25歳)がサムソンに金銭プラス1名とトレードになったということ。その金額はなんと30億ウォン!(約2億1000万円。今は円高なので。今までなら3億円)。チャン・ウォンサム投手の今季の年俸は8,000万ウォン(約600万円)。トレードマネーがいかに大きいかがうかがえるでしょう。

このトレードは、ヒーローズが球団維持のために「チャン・ウォンサムを売った」と言えます。かつて同じような形で、球団維持のために大物選手を放出し、結果、チームは衰退、消滅していった過去がある韓国プロ野球。その渦中にいたのが、パク・キョンワン捕手であったり、弱体化した球団・サンバンウルを率いていた、キム・ソングン監督です。「チャン・ウォンサムがサムソンに入ったら、打線の援護などで15勝はできる」とキム・ソングン監督。

「SKの独走許すまじ」というサムソンと、お金が必要なヒーローズの利害が一致したこのトレードですが、今後の球界に不安を与える韓国からのニュースに、東京ドームの韓国関係者は大きな衝撃を受けました。

(文・写真/室井昌也)

室井昌也
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。韓国のスポーツ紙でも、2006年よりコラムを毎週韓国語で連載している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。

ベタ負けでしたね、西武戦。結果は1対2でしたが、明らかに力負けでした。西武の岸は本来の力からすれば70%くらいの調子。打てても不思議はないキレのボールもありましたが、初対面での対決では、あそこまでが限界でしょうか。

残念なのは前日に本塁打を放ったリュウ・フウハオと3番に入ったチェン・レンフォンが、それぞれ負傷でスタメンから外れたことです。戦力全部がかかって負けたのなら仕方がないですが、台湾シリーズから調子を上げていた二人を欠けば、まあ精一杯だったでしょう。試合後に呂監督は「打順の組み方も間違った」と述べていました。が、それでも多くは望めなかったと思います。とにかく岸の緩急つけた投球に打ちあぐむばかりでしたから。

パン・ウェイルン
好投むなし、のパン・ウェイルン

ただ中国の主審は、あれはなかったですね。潘威倫もよく投げました。5安打2失点ですか。上々です。せめて去年のようなミスの連発、雑で無気力さを感じるプレーがなかっただけでも、ヨシとすべきかも知れません。
でも「仕方がない」だけに、後が深刻だと思います。勿論、監督の采配含め、戦術が伴えば戦い方も結果も変わった可能性がありますが、しかし今の統一にそれを求めるのは酷かと思います。第3日は韓国・SK戦です。西武より打線も振れているし、キッチリした野球をするので、より手強い相手です。

どうするのでしょうね。フツーに統一の攻め方でいくのか、一か八かの奇襲でもかけるのか。戦績は一勝一敗。SKに勝てばまだわからないのですからね。見どころはそうした“姿勢”でしょうか。あと先発が間違いないハックマンがどんなピッチングを見せてくれるか……。

と、書いているうちに裏情報が入ってきました。なんと……。ちょっと今の時点では差し障りもあるので書けません。ごめんなさい。

ただ、SK戦にハックマンの登板がなくなったことだけは書いてもいいかな。

統一、ピンチです。

ハックマン
幻と終わったハックマンの登板

(文:木村公一/写真:CPBL提供)

木村公一
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。

大会が始まりました。統一の初戦は中国・天津でした。結果は……勝ちました。潘武雄の生涯初というサヨナラスリーランで、です。でも、前日のブログでの“予感”が半分的中しました。負けるかも知れない試合でした。9回まで3対4。二死三塁で、代打は新人の郭俊佑。ところがこの子がレフトへの同点打。さすが統一期待の新人でした。

「クロ(郭俊佑のニックネーム)は初めてのドーム、慣れない人工芝ということで、レフトの守備練習でももたつきがあった。それで控えにした。でも明日の西武戦ではスタメンで使います」とは呂文生監督。SKに敗れ、気を引き締めてくるであろう西武に対して、この新人が再びなにかをしでかすことを期待したいです。対西武の先発はエースの潘威倫です。肩の疲労痛で苦しんだ去年、今年ですが、終盤から回復したとのこと。ビシッと四隅に決められれば、そう連打は喰わない(と期待します)。国際大会の常連でもあるし、きっと良い投球をしてくれる(と期待します)。

聞けば、統一も今年はかなりデータを入手しているとのこと。CPBLから派遣されたスタッフが、韓国シリーズまで偵察陣が出向いたそうです。いきあたりばったり風のゲームをしているような統一としては、意外です(慣れないことはして欲しくないけれど)。

でも、打線は本来の動きにほど遠かったですね。まだ眠っている感じでした。デイゲームということもあったでしょうか(台湾では気候ゆえ、ほぼすべてナイターです)。今日はどうでしょう。起きて欲しいものです。第2試合では西武が韓国・SKに敗れました。某実況アナ氏は「SKと統一の決勝もいいね」とも。そうなったら日本球界も目を覚まし、この大会に取り組む姿勢も変わるでしょうか。ならば、観衆がらがらの決勝となっても、意味があるというものです。眠っているのは、統一だけではないのです。

5回、追撃の本塁打を放ったリュウ・フウハオ。細身ですが、バネの利いたスイングがウリです。
5回、追撃の本塁打を放ったリュウ・フウハオ。細身ですが、バネの利いたスイングがウリです。

(文:木村公一/写真:CPBL提供)

木村公一
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。

毎年、初戦ナイトゲーム日本戦の翌日に、昼12時台の中国戦を迎える韓国。アジアシリーズ2日目の朝は韓国チーム関係者にとって、いつもつらいです。

さて、13日の埼玉西武戦、SKは勝利しました。昨年、中日から勝ち星を挙げていることと、シリーズ終わりで、万全とはいえない西武相手だっただけに、SKナインは「喜びを爆発!」ということはありませんでした。

戦前の注目は「キム・グァンヒョンが投げるのか?」ということでした。試合前、キム・ソングン監督は「韓国シリーズが終わった日に、キム・グァンヒョンにアジアシリーズ初戦の先発を伝えた」ということで、エースの登板は前々から決まっていました。しかし、この数日間で監督を悩ませる事態が起きます。正捕手、パク・キョンワン選手がアキレス腱を痛めたためです。これにより、キム・グァンヒョン投手の起用を、パク・キョンワン回復まで延ばすか?という考えも出てきたようです。

結局、予定通り、キム・グァンヒョンの先発となりましたが、チョン・サンホ捕手とのバッテリーは、いつも通りとはいきませんでした。

パク・キョンワンは自身の状態について、試合前「トレーナーからは台湾戦(15日)からは出られると聞いている。しかし、きょうの試合、できれば途中からでも出ておきたい。西武の打者たちは積極的に打ってくるという印象がある。注意するべき選手は1番打者で二塁手のカタ…タ…(「カタオカ」と教えてあげる)、そうそう片岡。初球から走ってくるし積極的だ。(代わりにマスクをかぶる)チョン・サンホは高校時代を除けば、はじめての国際大会で緊張すると思う。ベンチからサインを出すかどうかは、チョン・サンホがちゃんとやると思うよ」とのことでした。

パク・キョンワンは8回からマスクをかぶり、4番手のイ・スンホ投手の特徴をうまく引き出しました。特にスローボールを効果的に使い、審判の判定も味方にして打者6人から4三振。さすがパク・キョンワンというリードでした。

14日は天津ライオンズ戦。統一相手に接戦をしたそうなので、どんなチームかとても楽しみです。

ボード

上記の写真は、SK側応援席でチアリーダーや応援団長が客席に掲げている、選手名や掛け声のボード。日本人向け応援用に、毎年当方にて約40種作成し、球団イベントスタッフに進呈しているものです。

(文・写真/室井昌也)

室井昌也
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。韓国のスポーツ紙でも、2006年よりコラムを毎週韓国語で連載している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。

SK野手陣ですが、俊足選手と長打力がある選手、両方が揃っています。では、誰がポイントとなるかというと、これがなかなか難しく、チャンスをつかめばどこからでも点が取れる打線です。

足の速い選手では、金メダリスト紹介で記した、セカンドのチョン・グンウ選手。その他には、強肩でもあるキム・ガンミン選手、得点圏打率が3割4分7厘の左打者、パク・チェサン選手、小技の利く、控えでの起用が予想されるチョ・ドンファ選手といった外野手が並びます。

彼らを還すのが中軸の打者たちです。先日紹介した、イ・ジンヨン選手に加え、昨年のアジアシリーズで山井大介投手(中日)からソロアーチを放った、キム・ジェヒョン選手。そして、細身ながらパンチ力のある、チェ・ジョン選手も注目の存在です。チェ・ジョンは打率3割2分8厘でリーグ3位。チームトップの成績です。どのようなカウントでも満遍なく結果を残し、欠点の少ない選手。代表選手に選ばれても遜色ないのですが、いままでは同じくサードの、キム・ドンジュ選手(トゥサン)という大きな存在がいたため、機会が巡ってきませんでした。しかし、キム・ドンジュが北京五輪を最後に代表選手から退く意向を見せ、チェ・ジョンは次のWBCがチャンスとなりそうです。キム・ソングン監督も「頭を下げてでも、チェ・ジョンを代表選手に選んでもらう」というほどで、今回のアジアシリーズでは要チェックです。

チェジョン
ベビーフェースだが、やるときはやる、チェ・ジョン

そして4番を務めるのが、パク・チェホン選手。打点、ホームラン、二塁打の各部門でチームトップの成績を残しました。バッターボックス内側いっぱいに構え、じっくりボールを見極めるタイプなので、投手にとっては投げにくさを感じるかもしれません。かつては3割30本30盗塁を決めたプレーヤー。国際大会でも好成績を残しているのが強みです。

パクチェホン
以前は国際試合に強いことから「リトルキューバ」と呼ばれた、パク・チェホン

昨年同様、今年も東京ドームの前日練習でも、各選手気持ち良さそうにサク越えを連発していました。「バッターにとって最高の球場!」なんてイ・ジンヨン選手は笑顔いっぱい。チョン・グンウ選手もロングティーなのに、打球が何度もフェンスを越えていきました。これには福原峰夫コーチも「はぁー、すごいねぇ」と感心しきり。彼らにとって東京ドームは水が合うようです。

心配なのが、正捕手のパク・キョンワン選手が左足アキレス腱を負傷しているということ。これはピッチャーのローテーションにも変化が生じ、「パク・キョンワン選手が初戦には間に合わない、イコール、キム・グァンヒョン投手が決勝戦の先発登板に回る」とも予想されています。

韓国の初戦となる13日の埼玉西武戦は、どんな戦いになるでしょうか。

(文・写真/室井昌也)

室井昌也
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。韓国のスポーツ紙でも、2006年よりコラムを毎週韓国語で連載している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。

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