また裏切られました。期待すれば裏切り、見放せば信じられない勝ち方をする。その統一が、SKに勝利で決勝進出です。下馬評ではSK有利の試合でした。統一とファンにはお詫びするしかないですが、でも西武に勝ったSKだけに、ムリもないとご容赦下さい。
ではなぜ、勝つのは難しいと予想された試合に勝利したのか。MVPは2本塁打、6打点のリュ・フウハオであることに異論はありません。でも同時に先発で7回3失点に留めたリン・ウェイピンも同等の殊勲者でした。今季、抑えも務めた彼にとって7回までは、シーズンで二回しかありません。それも急な先発だったのですから。昨日のブログで触れましたが、舞台裏では大きなハプニングがあり、先発予定のハックマンが飛び、彼が投げることになったのです(その顛末は、許しが出れば残りのこのブログでお伝えします)。そんな中での7回3失点。上々の出来、どころではありません。彼の精神力には、改めて賛辞を送りたいと思います。とくに2回に先制本塁打を打たれても動揺することなく、その後も毎回、走者を背負いましたが文字通り踏ん張りました。男、です。彼は心臓の大手術を経ての復活投手。人生最大の好投と賛辞してもいいでしょう。
MVPのリュ・フウハオです。
でも、ほんと。統一の連中というのはわかりません。勿論、これだけの好試合を演出したのは、彼らに十二分な能力があったからです。野球において、まぐれや運は付き物ですが、でも9イニングを戦う中では、それだけでは絶対に勝てません。
ちょっと冷静に、引いて観たとき……。この試合で他国のチームと戦う国際大会というものの、“別の顔”を見た気がしました。SKは統一のデータを洗い出していても、実際にシーズンで戦ってはいません。だから長所、欠点は発見していても、潜在能力まではわからないのです。統一も、SKのことは同様に詳しくわかっていないはず。そこにある“怖さ”を感じたのです。リュ・フウハオが、SKの抑え・チョン・デヒョンと日々戦っていたら、その実績を先入観に持っていたはずです。とすれば、8回にあのようなヘッドを返したスイングが出来たかどうか。言い換えればリュ・フウハオにとって目の前に出てきた投手は、ただSKというチームの抑えに過ぎない。そして投げるボールにキレはない。極論すれば、その程度の投手だったのです。“顔で投げる”という表現がありますが、その顔は、国際大会では通用しないというわけです。とどのつまりは、グランドで見えるもの、感じるものだけでの勝負。それが国際大会の神髄なのではないか。そんなことを感じました。
では最終日の決勝、対西武戦です。西武の先発は湧井。五輪にも出ているから、まったく知らないはずはありません。でも日々戦っている投手ではないから、湧井のボールに対する先入観も少ないはず。もし日本シリーズまでの疲労を抱えてマウンドに登れば、統一打線にとっては「ただフォークの良い投手」だけに映るわけです。そこが勝機でしょうか。あとは投手次第ですが、実際、SK戦で全力を使い切りました。成り行き任せです。序盤に大量失点すれば終わりです。でも、それぞれの投手が“ネンイチ”の投球をするかも知れません。
だから予想は不可能です。もう意味はありません。刮目して一回一回を観る。あとは野球の神様だけが知っていることです。
高津に似ていますが、“男”、リン・ウェイピンです。
(文:木村公一/写真:CPBL提供)
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。
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