さて、7日は各チームの公式練習が行われました。
統一も、オレンジのユニフォームに身を包んで東京ドームのグランドに姿を現しました。
他のマスコミ関係者や、中日関係者からは「でかいのが多いな」という声も漏れたほど、統一ナインの姿は威風堂々たるものでしたね。
ですが、打撃練習に入った印象は「?」でした。移動の疲れもあるのでしょうか芯を外す打球が多く、本来のガシガシ打ちつつも、きっちりミートした打球が見受けられません。
象徴的だったのは、「布雷」のグランドネームのブリトーです。
今季33本塁打、107打点で2冠王に輝いたドミニカン。
彼の打球は、普通なら打った瞬間に練習でも軽くスタンドインする軌道なのですが、ほとんどがライナーかゴロで人工芝の上を転がって行くものばかりでした。最初は初めてのドームの感触を確かめているのかと勘ぐりましたが、打ち続ける姿を見ている限りでは、そうでもなさそうです。
ブリトーは昨季途中に統一に入団し上記のように今季、33本で本塁打、打点107の2冠を獲得。33本と7試合連続本塁打はともにリーグ新記録更新です。韓国でもサムスン、SK、ハンファノ3球団に所属し、今大会出場のSKは古巣のひとつ。得点圏打率.388。対右長打率.638。対左長打率.587を誇るスラッガーです。
難を言えば打ち損じが多いこと。
確実に捉えていれば打率3割7分、本塁打45本は台湾なら打てている打者です。
それと守備の拙さ。韓国時代に膝を痛めて持病になっており、シーズン中は腰高の守りが目につきました。まあそうした欠点がなければ、台湾はおろか、メジャーでプレーしてたでしょうが。
ちなみに公式練習日には、SKの練習時間にも姿を現し、親しかった選手と歓談していました。(韓国の選手が一生懸命英語で話しているのが印象的でしたね。どこまで通じているのかビミョーな雰囲気でしたが、ま、会話ってのは正確に通じることが第一じゃないから)。
彼らの打撃練習を眺めているとき、一色トレーニングコーチの話を思い出しました。
台湾シリーズが終わった翌日。
国際電話で話したときに、彼はこんなことを指摘していました。
「気になるのは相手以上に試合時間です。選手たちは昼の試合に慣れていないから」。そう。1年中温暖、かつ夏場は暑い台湾では、デイゲームはないのです。平日は6時半からで土、日曜が5時。日本のような1時、2時という時間帯の試合はほとんど経験していないのです。加えて1時間の時差があります。
でも大会初日はなんと12試合開始。台湾にしてみれば午前11時の開始時間になるわけです。そのためには少なくとも朝7時くらいには起きなければなりません(台湾なら6時です)。
「選手には事前に自己調整するように話していましたけど、元来、夜型の野球選手ですからね」一色コーチは、そうも漏らしていました。さすがにベンチで居眠りすることはないでしょうが、そんな調整も、こういう大会では必要なわけですね。
ただ、日本人の我々には理解不能な「火事場の馬鹿力」を秘めている選手ですから、練習と本番では“別人”になることも珍しくありません。なにせ第一回の本文でもご紹介したように、マンガのようなペナントリース、プレーオフを制してきたチームですから。
(文・写真 木村 公一)
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。
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