日本の野球ファンにとって、今季、韓国球界から飛び込んできた最も気になるニュースは「高津臣吾投手(元ヤクルト)、韓国入り」ではないかと思います。
高津投手はシーズン途中の6月中旬、ウリヒーローズにクローザーとして期待されての入団。今季、米球界入りを模索していた高津投手にとって、韓国は想定外の地ですが、「本(当方の著書「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」)、紀伊國屋で買いましたよ」と事前に準備をしての渡韓でした。
談笑する高津投手
6月24日に初登板。以後、130キロ台の直球と、90~100キロ台のシンカーとの緩急、安定した制球力で、各打者にバッティングをさせませんでした。特に、追い込まれても自分のスイングをしてくる打者たちは、高津投手のシンカーにタイミングを大きく崩されました。
3度目の登板となった6月29日のLG戦で初セーブ。7月12日まで5連続セーブを挙げました。ランナーを背負った場面や、ボールが先行した状況での落ち着いた投球が光ります。正捕手が高津投手と同い年、40歳のベテラン、キム・ドンス捕手ということで、多く盗塁を許されるのでは?という懸念もありましたが、それも巧みな牽制球で封じていきます。
しかし、高津投手にとってアンラッキーなことに、所属チームのウリは、昨オフに親会社の業績悪化により消滅した、ヒョンデ球団を引き継ぐ新生チーム。満足に春季キャンプを行えないままシーズンに突入し、チームは低迷していました。競った展開で終盤に持ち込めず、抑えの高津投手の出番はなかなか訪れません。
7月中、下旬は、セーブがつかない状況での2度の登板のみ。そして8月の韓国プロ野球は、25日間のオリンピックブレイクに入ってしまいました。9月に入っても、なかなか緊迫した場面は訪れず、9月12日、ようやく1点リードの9回表という状況になり、高津投手は2ヶ月ぶりのセーブを挙げました。
高津投手の今季は18試合に登板し、1勝0敗8セーブ。21回を投げて、18奪三振。防御率0.86と、チームの守護神としての役割を果たしました。ただ、なかなか登板のチャンスがなかったことが悔やまれるところです。<次回につづく>
(文・写真/室井昌也)
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。韓国のスポーツ紙でも、2006年よりコラムを毎週韓国語で連載している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。
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