さて、台湾シリーズです……と思っていましたが、やはり“あのこと”に触れなくては行けないでしょうか。台湾の今季終盤、大がかりな八百長&賭博の摘発がありました。それもチーム自体が八百長をしていたという、驚愕モノでした。あまり馴染みのない方々に、細々としたことを書いても却って理解して貰いにくいと思うのですが、要するにチームの背後に暴力団がおり、球団代表格の人物が選手だコーチだに指示していたというのです。これまで何度も選手の八百長が摘発され、ある程度は免疫が出来ていた私でしたが、さすがに驚き、呆れました。そのチームはオフに除籍となり、来季は5チームで行うことで調整が進んでいるようです。
一時は、プロリーグ自体が無くなるのではという危機すらありました。そりゃそうです。ファンは完全にソッポを向くことは間違いない。野球なら日本やMLBも台湾ではテレビで観ることが出来ます。本当の野球好きなら、もう国内は見限り、そっちの方で楽しむでしょう。もともと球団運営は困窮を極めています。幾つかのチームのオーナーは、いつ手放しても驚かない、という状態でした。でも八百長ムードが漂うプロ野球に宣伝効果は少なく、買い手など見つかるはずもありません。手放すとは、事実上の撤退→チーム減→リーグ消滅という末路を意味します。
そんな空気が失せぬ間に、台湾シリーズが始まることになりました。果たしてファンは球場にやってくるのか?
秋門…正確な意味は不明です。私は勝手に「秋の最終決戦」って理解してました。多謝。
これが来たんですねぇ。来たどころか、前売りチケットを販売する端末機械がパンクするほどの“殺到ぶり”だったのです。でもって、公式戦は平均して1900人程度しか入らなかった球場に、12000人が押し寄せたのです。去年のLanew対統一のカードでは、そんなことはありませんでした。ということは、やはり兄弟の人気によるモノとしか考えられません。いずれにせよ、リーグ存亡の危機を、他ならぬファンが回避したのです。このあたりのことは、また機会を見て触れたいと思います。とにかく、そんな背景アリで、台湾シリーズは始まりました。ムードとしては、最初から兄弟の絶対有利のスタートでした。
統一・兄弟の面々。中央の2人が監督です。
(文:木村公一/写真:CPBL提供)
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。
鬥=鬪