前日の公式練習を見に行きました。午前10時から、わが統一獅隊。見慣れた顔ぶれです。ですが、どこか去年とは違う気がしました。自信というか、落ち着きというか。兄弟との台湾シリーズを勝ってきたためでしょうか。それとも去年に続く2度目の東京ドームだからか。練習態度にも、浮かれた感じがしませんでした。でも統一は期待と予想を裏切るチームです。まだ信用は出来ません。
明日は統一と天津の試合から今シリーズがスタートです。統一の先発は林正豊(リン・ゼンフォン)。今季、5勝3敗だった投手です。ストレートはMAXで146キロくらい。チェンジアップが持ち味の投手です。シーズン5勝の投手ですが、彼がフツーの投球をしたらまず負けることはないでしょう。統一打線がリズムを掴めば、7回コールドもアリです。申し訳ないですが、天津はそのくらいのレベルに映りました。勿論、ともに初対戦ですから、断言は出来ません。統一は、期待と予想を裏切るチームです。
リン・ゼンフォン。温泉帰りではありません。
打線では、郭岱琦(クォ・タイチ)がいい当たりをしていました。シーズン8本塁打の彼ですが、打球は小笠原のようにスタンドイン連発でした。フリー打撃だけなら、30本塁打の打者でした。「ドーム球場は、やっぱり飛びます」。郭だけでなく、多くの打者が口を揃えていました。「ボールも台湾での使用球より飛びます」。劉芙豪(リュ・フウハオ)は、そうも言っていました。心配なのは、みんなが錯覚して本塁打ばかり狙いに行くことですが、統一の面々でも、さすがにそこまでアホではないと信じています。しかし、天津相手だからと「いつでも点が取れる」と甘く見てはいけません。これは、少し心配です。
クォ・タイチ。雰囲気は3割打者です。
それに、本当の敵は西武であり、SKです。ただ勝つのではなく、翌日に繋がるような内容ある勝利を願います。
ただ、天津チーム。彼らも練習から一生懸命さが伝わってきました。初めてのドーム。初めての人工芝。こんな球場で試合をしたことのない彼らには、ただそれだけでも十分にハンデになるはずです。そんな環境で、どんなプレーを見せてくれるか。
この大会は、アジア一を決めると同時に、各国・地域の野球への活性化という目的、意味合いもあります。中国は代表ではなく初めて単独チームでやって来ました。彼らも、中国のリーグ戦で優勝してきたという自負があるはずです。そして、本国では認知もされないマイナーな野球でも、彼らにとっては人生なのです。そんな意地が観たいものです。
当たり前か、不思議なものか。視点を移すだけで、主人公が変わり、垣間見えてくる野球人生もまた、変わります。だからみんな、主役です。だから勝敗より、いい試合を見せて欲しいと思うのです。
(文:木村公一/写真:CPBL提供)
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。
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