アジアシリーズ初日、18時から行われた中日対SK。中日守備陣のミスもあり、6-3でSKが勝利。SKは、アジアシリーズで初めて日本のチームに黒星をつけたことになります。
ゲーム詳細は、各所で見ることができると思うので、この試合の背景にまつわる話を記します。
まず、6回2/3を0点に抑えた、ルーキーのキム・グァンヒョン。SK紹介<3>でもお伝えしましたが、韓国シリーズ第4戦で好投し、注目の的となりました。キム・ソングン監督は、キム・グァンヒョンに対し、10月29日の時点で、アジアシリーズ初戦での先発を伝えたとのこと。監督は今となって「早く伝えすぎて緊張させてしまったかも」と振り返
りますが、心配をよそに、中日打線をきっちり抑えました。これも、緊張感のあった初回に迎えたピンチを、0点で切り抜けた点が大きいでしょう。
キム・ソングン監督は、今年2月の沖縄・具志川キャンプでキム・グァンヒョンについて「素材的には彼は日本に持ってきても有望視されるでしょうね。新人の左投手であれくらいの球を放れる投手は少ない」と話していましたが、期待のルーキーとはいえ、その時はまさか、秋に日本チーム相手に勝ち星を挙げるとは思ってなかったのではないでしょうか。
今以上にあどけない表情だった、今年2月のキャンプでのキム・グァンヒョン
SKナインは1回表の攻め、とにかく固さが目立ちました。しかし、その裏、キム・グァンヒョンがピンチをしのぎ、徐々に選手たちがほぐれてきた様子が、グラウンドレベルで見て取れました。
この日のSKの打線は、シーズン中とはちょっと違ったもの。中日投手陣からそうは点がとれないと見て、攻撃的な布陣を組みました。通常、外野では、守備面を考え、パク・ジェホン、イ・ジンヨンはどちらかを併用となるケースが多いのですが、両方をスタメンに並べ、クリンアップカルテットともいえる打順を組みました。
また、2回には無死一・二塁の場面でパク・ジェホンに、普段にはない送りバントの指示。結果失敗し得点にはつながりませんでしたが、「なんとしても先取点が欲しい」というSKベンチの思惑が見て取れました。
6-3で中日に勝利したSKですが、特にはしゃぐという様子はなし。SKは、普段から監督以下、コーチたちが選手を我が子のように、真剣に向き合っている姿を目にします。その親たちが勝利のあと、あえて引き締めたような表情をしているのを見て、子供たちは喜びをグッと押し殺しているように見えました。キム・グァンヒョンは好投しましたが「相手のミスでもらった勝ち星」という冷静な判断がチーム内にはあるようです。
初戦で強敵中日をやぶったSKは、今後どんな戦いを見せるでしょうか?
(文・写真 室井昌也)
室井昌也

1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は2004年より毎年発行。今年もアジアシリーズのプロモーションとして11月10日に「韓国プロ野球トークライブ」を実施。
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