お次はピーター・マンロー、32歳です。
彼は開幕時から来てました。アメリカ人の先発投手って、基本的に試合前の練習は別ってヤツが多いんです。とくに先発の日はひとり離れてウォークマンで耳を塞いで、本を読んでいたり。サングラスしてることも多いので、見るからに「近寄るな」って感じなんです。でも登板明けの日は、こんな感じでリラックス。写真撮った日も、なにげに声かけて話し始めたら、喋るわ喋るわ。身の上話って感じで、マイナー時代から延々、聞かされました(語彙力の問題で、半分は理解できませんでしたが)。
でもまあ、アメリカ人で一度はメジャーを目指し、昇っては落ちして30過ぎると、やっぱりアジアから声がかかるんですよね。
で、金を稼ぐため、仕事としてやってくる。
その間の心の葛藤や想いは、そりゃいろいろあると思います。勿論、ビジネスと割り切って最後は来るわけだけれど。ほんと、こうした連中と接するたびに、野球という「娯楽」は彼らにとって「仕事」なんだと実感させられます。
その点、日本でプレーしている日本人選手は、甘い。
閑話休題。
ピーターは今季14勝。藩とともに統一の優勝を支えた原動力でした。
投げる球は、いわゆる“汚い球”です。まともなストレートなんてありません。それでゴロに打ち取り、フライを打たせる。そして稼ぐ。なにやら噂では、韓国チームからも関心が持たれているとか。監督の呂さんもそれを耳にし「じゃいっそのことSK戦に投げさせるか」と決めたとか。
その方がモチベーション上げて好投が期待できる、と言う計算ですな。台湾や韓国でプレーしている外国人選手にとっては、この大会は自分の力を見せつける機会でもあるわけです。まあそれで統一からサヨナラするのはちと複雑な思いもありますが、見方を変えれば「野球界とは一期一会」の世界。
監督もそう割り切っての起用でしょうか。と同時に、また別の場所やチームで意外な出会いもあったり。それもまた野球という世界の妙でもある。
ピーター登板明けの日は、こんな感じでぶらぶらしてます。
お次にご紹介する曹竣●(ツァオ・チュンヤン)は、台湾人投手。
2000年から数年間、中日にいました。でも中日では正直パッとした活躍が出来ず、台湾に戻ったクチです。今年で31歳。チームでは中継ぎをしています。
本人は「もう歳。身体がいうことを利かない」と達者な日本語で笑って言いますが、かつてはストレートえぐいスライダーで台湾屈指の右腕と讃えられました。で、希望を胸に中日に。
今大会は、その中日との対戦です。川上憲伸や、小笠原ほか、当時から仲の良かった投手とも再会を果たしました。まあ入ったチームが悪かった気もします。当時から中日の投手陣の層は厚かったはず。楽天みたいなチームだったら、もつと成績も残せたかも知れない。
でも誘われていく立場では、そんなチームの内情なんて知らないですからね。とくにアジア人選手の場合、代理人もいないことが多いし。そう言う意味じゃ、ちょっと気の毒というか、運もなかった選手かも知れません。ほんと「運」て大きい。ま、それはプロ球選手に限ったことではないけれど。
「アジアシリーズで日本に来たら、なにがしたい?」と尋ねたら「居酒屋に行きたい」と言ってました。東京ドーム近くの居酒屋に足を踏み入れたら、彼がいるかも知れません。
ま、その前に、中日相手に渾身の一球を投じて貰いたい。
そんな気持ちで応援するつもりです。
※●は、山へんに易です。
ツァオ・チュンヤン 「顔がでかいから写真、嫌だなぁ」と笑っていました。
木村公一

1961年東京生まれ。80年代半ばから韓国プロ野球を取材。台湾は90年のプロ発足時からフォロー。アメリカもメジャーリーグからマイナー、独立リーグと野球あるところ歩き回る。著書に『裏方―物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説』(角川書店)など。
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